祝融しゅくゆう
火神の末裔を名乗り、蜀の将を飛刀で生け捕った女将軍
人物
南蛮王孟獲の妻で、火の神祝融の末裔を名乗る女傑である。演義の女性で、自ら武器を取って戦場に立つのは彼女だけと言ってよい。背に五本の飛刀を差し、丈八の長槍を手に赤い巻き毛の馬にまたがり、百発百中の飛刀を投げる。五度にわたって諸葛亮に敗れ続ける夫の不甲斐なさに業を煮やした祝融は、「女のわたしが出るしかない」と自ら軍を率いて出陣した。蜀の張嶷が迎え撃ったが、祝融は飛刀で張嶷を馬から落として生け捕り、続いて出てきた馬忠も縄をかけて捕らえた。だが諸葛亮は趙雲と魏延に偽りの敗走で祝融を誘い込ませ、馬岱が伏兵で祝融の馬を転ばせて捕らえた。諸葛亮は祝融を丁重に扱い、張嶷・馬忠との人質交換で孟獲のもとへ返した。最後に孟獲とともに蜀に心から服し、夫婦で蜀の恩に感謝したと語られる。
名場面
飛刀で二将を捕らえる
孟獲が五たび捕らえられて帰ってくると、祝融は「男のくせに何度捕まるのだ」と夫を叱りつけ、自ら五万の兵を率いて出陣した。蜀の張嶷が「女と戦うのか」と侮って槍を合わせると、祝融は数合のうちに馬を返して逃げるふりをし、振り向きざまに飛刀を放った。張嶷は腕を射抜かれて馬から転げ落ち、南蛮兵に縛り上げられた。救おうと飛び出した馬忠も、南蛮兵の縄にからめ取られる。蜀軍は女将軍の前に色を失った。
馬岱の伏兵
諸葛亮は趙雲と魏延に「祝融と戦うふりをして逃げよ。くれぐれも本気で戦うな」と命じ、三日続けて祝融を挑発させた。四日目、魏延が散々に罵って逃げると祝融は怒って追いかけ、山道に差しかかったところで馬岱の伏兵が馬の足を絆で払い、祝融は地面に転がって捕らえられた。諸葛亮は祝融の縄を解いて酒を勧め、「捕らえた張嶷・馬忠と引き換えにお帰りなさい」と告げた。祝融は深く恥じ入って帰った。
「男のくせに、何度捕らえられれば気が済むのです」と夫を叱ったと伝わる
正史ではどうだった?
祝融夫人は正史に登場しない架空の人物で、孟獲に妻がいたという記録もない。南方の諸民族には女性の首長が珍しくなく、火の神祝融を祖とする伝承は南方に根付いていたため、演義がそれらを合わせて生み出した人物と考えられている。女性武将が活躍する数少ない場面として人気が高い。