張飛ちょうひ 字・翼徳
一喝で大軍を退けた、万夫不当の豪傑
人物
涿郡の人。肉屋と酒屋を営む豪農で、豹のような頭、丸い目、虎のような髭を持ち、声は雷のよう。劉備と出会ってその志に惚れ込み、私財を投げ出して桃園の誓いを結んだ。一丈八尺の蛇矛を振るえば万夫不当、虎牢関では呂布と渡り合い、長坂橋では単身仁王立ちして曹操の大軍を一喝で追い返した。酒を愛し、酔うと部下を鞭打つ悪癖があり、徐州を呂布に奪われる失敗もしたが、年を経るにつれ知恵も身につけ、巴郡では厳顔を計略で生け捕りにして礼を尽くして降し、瓦口関では張郃を破った。関羽が呉に殺されると、仇討ちを急ぐあまり部下に無理を強い、出陣前夜、恨みを抱いた范彊・張達に寝首を掻かれて非業の死を遂げた。
名場面
長坂橋の一喝
曹操の追撃を受けて逃げる劉備軍の殿を、張飛はわずか二十騎で引き受けた。騎兵の馬の尾に枝を結ばせて林に土煙を上げさせ、伏兵がいると見せかける。そして橋の上に一人、馬を止めて叫んだ。「燕人張飛ここにあり。命が要らぬ者はかかってこい」。その声に曹操の側近夏侯傑は馬から落ちて絶命し、大軍は雪崩を打って退いた。
厳顔を降す
入蜀の途上、巴郡の老将厳顔は城を固く守って出てこない。張飛は小道から迂回すると見せかけて偽の張飛を進ませ、本物は背後で待ち伏せて厳顔を生け捕った。「なぜ降らぬ」と怒鳴る張飛に、厳顔は「首を斬られる将軍はいても降る将軍はいない」と言い放つ。張飛はその気骨に打たれ、自ら縄を解いて上座に招いた。
督郵を鞭打つ
黄巾討伐の功で劉備が安喜県の尉になったとき、視察に来た督郵が賄賂を求め、断られると劉備を陥れようとした。それを知った張飛は、酒の勢いもあって督郵を引きずり出し、柳の枝で何十回と鞭打った。劉備は官印を督郵の首にかけて官を捨て、三人はまた旅に出る。張飛の正義感と短気が同時に出た一幕だ。
「燕人張飛ここにあり。死を決した者はかかってこい」
正史ではどうだった?
正史では字は益徳。長坂で殿を務めて曹操軍を阻んだこと、厳顔を降したことは事実である。ただし肉屋の出身という話は創作で、むしろ書や絵をたしなむ教養人だったとの伝えもある。目下に厳しすぎた性格が死を招いた点は演義と同じだ。